🏯 櫓をもう一度──福山城の記憶と、未来への願い

城郭

福山駅のホームから見える天守──それが、私と福山城の最初の出会いでした。 何度も足を運ぶうちに、天守だけでは語れない城の奥深さに気づき、失われた櫓(やぐら)たちの存在が気になり始めました。 この記事では、福山城の築城背景、櫓の役割、戦災による喪失、そして復元への願いを、わかりやすく丁寧にお伝えします。

📜 なぜ福山に城を築いたのか──水野勝成の選択

福山城を築いたのは、徳川家康の従兄弟・水野勝成。 1619年、福島正則の改易後、備後10万石に入封した勝成は、西国の外様大名を監視するための拠点として新たな城を築く必要がありました。

候補地は3つありました:

  • 桜山(新市):防御向きだが海路に不便
  • 箕島:海に近いが陸路から離れている
  • 城山(常興寺山):海陸両方の交通の要衝

勝成は、山陽道と瀬戸内海の両方にアクセスできる「城山」を選びました。 この地は、軍事・政治・経済の中心として理想的だったのです。

🏗️ 福山城の櫓──防御と美の融合

築城当時、福山城には20基以上の櫓がありました。 櫓は、城の防御・監視・倉庫・通信などの役割を担う重要な建物です。

代表的な櫓には:

  • 伏見櫓:伏見城から移築された現存遺構
  • 月見櫓・御湯殿:城主の暮らしに寄り添う空間
  • 火灯櫓・乾櫓・鉄櫓:防御の要となる角櫓

櫓があることで、城は立体的に機能し、防御と美意識が融合した空間となっていました。

🔥 戦災で失われた櫓──静かな喪失

1945年8月8日、福山城は空襲により天守と多くの櫓を焼失しました。 鉄板張りの天守、火灯櫓、乾櫓、鉄櫓──その姿は今、写真や図面にしか残っていません。

私は石垣の上に立ち、かつて櫓があった場所を見つめながら、そこに吹く風の中に、失われた記憶の気配を探したことがあります。 櫓がないと、城の構造がどこか平面的に感じられ、防御の連続性が途切れてしまった印象を受けます。

🛠️ 令和の大普請──復元された櫓と、これからの整備

2022年、築城400年を記念して「令和の大普請」が行われました。 鉄板張り天守の復元、伏見櫓の保存整備、月見櫓の再建──これらは、過去を未来へつなぐ文化的再生の象徴です。

しかし、まだ戻ってきていない櫓もあります:

  • 火灯櫓:伏見櫓と対をなす美しい二重櫓
  • 乾櫓・鉄櫓:城の北西側を守っていた角櫓
  • 東坂三階櫓:二の丸を守っていた
  • 神辺一番櫓:伏見櫓の手前に存在していました神辺城の天守閣と言われています
  • 本丸御殿:現状では表向きのみ可能

これらの復元が進めば、城の構造がより立体的に理解でき、観光客にとっても体験価値の高い空間になるでしょう。

🌿 私の体験──櫓跡に立つ時間

私は何度も福山城に通い、季節ごとの風景を歩きながら、石垣の配置や通路の折れ、門の構造を確認してきました。 櫓跡の草の上に立ち、礎石の痕跡に目を凝らすと、そこにあった建築の重みと気配が静かに語りかけてくるようでした。

「櫓をもう一度」──それは、城を再び立体的に理解するための願いであり、失われた空間に命を吹き込むことでもあります。

福山城 (備後国) - Wikipedia

📝 おわりに──櫓が戻るとき、城が語りはじめる

櫓の復元は、建物の再建だけでなく、文化の再解釈と共感の再構築でもあります。 それによって、天守だけでは語れない城郭の奥行きが可視化され、訪れた人に新しい体験を提供できます。

福山城は、地域の記憶と誇りを育む場として、今も息づいています。 そしていつか、石垣の上に風が吹き、そこに建つべき櫓が、そっと輪郭を見せる日が来る──そんな未来を、私は静かに願っています。

🏯 福山城天守閣──鉄板に刻まれた西国鎮衛の象徴

福山城の天守閣は、築城者・水野勝成が元和8年(1622年)に完成させた、近世城郭の到達点とも言える層塔型複合天守です。 その姿は、戦国の名残と江戸の平和を併せ持ち、防御と美の両立を体現した建築でした。

📜 歴史と構造──五層六階の複合天守

  • 構造:五層六階+地階、層塔型複合天守
  • 附櫓:二層三階の小天守が接合され、複合式を形成
  • 屋根意匠:比翼入母屋・唐破風・千鳥破風など、華美な装飾が施されていた
  • 防御性:鉄砲狭間や海鼠壁、格子窓など、実用性も重視された設計

特筆すべきは、北面のみ鉄板張りという全国唯一の構造。これは、西国鎮衛の城として、北側からの攻撃に備えた防御策でした2。

🔥 焼失と再建──市民の力でよみがえった天守

  • 1945年:福山空襲により天守閣が焼失
  • 1966年市制50周年記念事業として、鉄筋コンクリート構造で再建
  • 2022年「令和の大普請」により、鉄板張り北面を含む外観復元が完了

この復元は、市民・企業・全国の寄付者による一口城主制度によって支えられ、鉄板裏には寄付者名が刻まれています。まさに、市民の誇りが形となった天守です2。

🏛️ 現在の天守閣──博物館と展望の空間

  • 福山城博物館として一般公開
  • 水野勝成・阿部正弘など藩主の資料展示
  • 火縄銃体験・一番槍レースなど、体験型展示が人気
  • 最上階からは福山市街を360度一望。晴れた日には瀬戸内海も望める
  • https://fukuyamajo.jp/miru/tenshu/

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